道草食べて腹一杯

ゆる〜い自分探しのための過程を綴る

読書記録「オートメーション・バカ」ニコラス・G・カー著

タイトルがなんとも言えないセンスなんですが、中身は至って真面目です。著者の前の本が「ネットバカ」だったので続編的なノリなのかもしれません。

 

概要

様々な分野でオートメーション化が進んでいて、そこに携わる人間のスキルが低下しているというお話。分野は様々で、医者、パイロット、建築家、デザイナーなどなど、クリエイティビティに富んだ方々にも及んでいます。パイロットを例に挙げると、渡航中は自動運転なのでパイロットは基本的には機器の計測係になっていて、突然何かが起こった時にパニックになり間違った操作をおこなって事故に繋がるといった具合です。オートメーション化されることで、飛行機の操縦スキルは減退したのが要因なのではという感じですね。最後の方で仕事とツールの考え方(感じ方)が書いてあり、考えさせるもんがありましたね。

 

 面白かったとこ

「労働のパラドクス」

労働の時間の方が余暇より自分のしていることに満足し、自由な時間の時は退屈し不安を感じる傾向にあった。ただ、感覚的には仕事中は休みたい、休暇中は仕事に戻りたくないと感じている。なんとなくわかりますよね。でもこれが進んじゃう(世の中の仕事がなくなっちゃう)と退屈と不安だらけの社会になるということです。一度は経験したいものですが…。

 

「 課題の困難さと刺激の強さの関係」

ネズミちゃんを使った実験なんですが、部屋から続く白い道と黒い道があって、黒い道を通ると電流が流れるようになっていて、電流の刺激の強さを変えることでネズミの学数と記憶を測ったものです。その結果は、中電流のネズミが一番ミスが少なく、上達し刺激が強さがスキルアップにつながらないことが見えてきました。そして、次の実験では白い道と黒い道をよりはっきりわかるようにして、同様な実験を行うと、今度は強のネズミが早かったという結果になりました。白黒はっきりわかることでネズミにとっての課題の困難性が下がったと考えられます。結論としては課題の困難な場合には中程度の刺激がもっとも適していて、弱くても強すぎてもダメだということです。届くか届かないかくらいの目標設定がちょうどいいんですね。オートメーションによって刺激が弱くなりすぎて、いざトラブル(強い刺激)がくるとパニックになっちゃうというのに関係しているということでした。

 

感じたこと

ある分野で人間の好奇心や想像力を発揮させるためには、その分野へのオートメーション化を避ける必要があるかもなぁ。そうでなければその分野における深い洞察は得られず、効率化は進むものの新しいものを生み出すことは止まってしまうかもしれない。

GoogleMapでのナビゲーションはよく使いますが、確かにナビゲーションに頼っている時って通ってきた場所の記憶ほとんどないなぁと思いました。方向感覚がないと言うか、帰りは来た道戻るだけなのにわからない。他には漢字全然書けなくなったなとか、記憶力なくなったなぁとか(これは年のせいかも)。「便利さと引き換えに自律性を失った」と書かれていましたが、まさにそうだなと痛感しています。それでいいじゃんって簡単に言え無いなぁと。

便利なツールを選ぶときは、その効率化された部分が自分にとって捨ててもいいスキルであることを自覚しながら使わないといけないなと感じましたね。 特に「判断」に関わるような部分は死守ですな。

「めんどくさい」それはあなたのスキルアップのチャンスかもしれない